■紹介その3 |
「あ痛たた・・・もう,頭にこぶできちゃうよ・・・」 ここは,パイオニア2艦内の倉庫群の1つ. いきなり空中に現れた少女は,落下時に頭を打ったせいで涙目になり,そう呟きました. 「伊吹.大丈夫?」 「うん,大丈夫だよ,ステラ」 伊吹と呼ばれた少女の側に,ステラと呼ばれた,これまた不思議な物体が浮いています. 機械の様ですが,一見して兎の顔にも見えます. 会話をするところを見ると何等かの知性と呼べる物を備えているようです. 「それにしても一体ここは何処?・・・そう言えば,占領へりおんを追って部屋に入ったとこまでは覚えているんだけど・・・」 明らかに記憶の場所と違う風景に戸惑う伊吹. 「アラームメッセージ.未確認物体の反応を検知したよ」 「誰か来るのっ!?」 ステラの警告から,さほど経たないうちに足音が聞こえてきたので,部屋の奥へ隠れます. 「・・・あんにゃろ,やっぱりあの鎧の養分と化してきた気がしてならないよ・・・」 じっとしていると,ドアが開き,人が入ってきました. (!?あれは,検非違使ねいぶじゃない.てことは,私捕まっちゃったの?) ステラに向いて,ひそひそと話す伊吹. (私には判らないわよ.教授にでも相談しないと・・・) 「うーん,特殊なアンチドートは何処だったかな?」 だんだん近くに迫ってくるNAVE. (う,うわ,見つかっちゃう) (俺に代われステラ.先手必勝だっ) 伊吹とステラの頭に響く声,それは伊吹が持っているカードの1枚からです. 「ア,アレク.でもここ敵の本拠かもしれないのよ?様子みたほうが良いわよ」 「うるさい.だいたい,さっきまで俺だったのに,どうして今はステラなんだよ」 「ん?誰かいるの?」 「「「やばっ」」」 いつの間にか普通の音量で喋っていたので,NAVEに見つかった様です. 「し,仕方ないから変身するよっ.嫌だけど,ここで捕まる訳にはいかないもん」 「ちっ,時間がない.ステラ,お前がフィールド展開しつつ俺と交代だ」 「わかったわ」 3人?の気持ちがまとまったみたいです. 「カットインフィールド展開.伊吹,今よっ!!」 ステラから目に見えないフィールドが展開されて,場は一瞬時が止まった様にも見えます. 続いて,伊吹が腰のポーチからカードを人差し指と中指に挟んで,すっと取り出し顔の前で止めます. 同時にステラが前に回ってきて,停止しました. 「サポートAIプラグイン,Code:AlexKid.カードスラッシュ!!!」 一条の光と共にステラ背部のスロットにカードをくぐらせる伊吹. 「よしっ,俺の出番だ~」 ステラからアレクへと物体の意志が変わります. 「・・・我が意志に反し定められし命題,そを成就するは稀なる業物,これに・・・」 胸の前で手を合わせてなにやら呟くと,光が集まり,それは1つの杖の様な物になりました. 「マジカルハンター伊吹,推参っ!!」 くるくると身体を回して,ポーズを決めます. ハートの光がきらきらと杖から辺りに舞います. 「ゲージは既に全開だ.一気にいけっ」 アレクの台詞に続き,連続カットインです. 伊吹の周りに光が集います. 「不幸(おやくそく)を打ち払う新たなる力,此度選びし零(ゼロ)より羽ばたく終わりなき力よ我が身に集え!!」 光は収束し,杖の形状が変わります. ぐっと長くなり,羽が先端の両側を飾っています. 見た目身長の倍くらいですが,軽いのでしょう,楽々と振り回し,びしっと,決めます. 本人の背中にも白い羽が可愛らしく揺れています. 「いくぞっ!!」 気合いを入れて構える伊吹,だが,相手の様子が変です. 「へー・・・なかなか面白いもんだねぇ.あ,ひょっとして番組のアトラクションにでも登場する子かな?そんなとこで練習してるなんて熱心だね.でも,もうすぐ出番じゃないの?私と一緒に会場に戻ろ」 「「・・・え?」」 カットインフィールドとは,攻撃の意志を持つ物に対して有効な物で,その場合対象は,フィールドが終了するまで当事者に手出しができないという一種の無敵(お約束)時間です. でも,敵対してない相手には何等影響を与えません. この状況に,ぽかんとする伊吹とアレク. 「あ,あの・・・あなたは検非違使ねいぶじゃないの?」 「けびいし?なんのことか知らないけど,私はNAVEだよ.知ってるの?」 「あ,えと,その,な,な~!!!」 「はいはい,さっさと行くよ」 NAVEに手を引かれて歩き出す伊吹,ところでアンチドートは? 所は変わり,会場裏・・・ 「やっぱり俺はみんなの所に行くぞ?」 「好きにするが良い.だが,人は流れには逆らえぬと言うことを知るだけだろうがな」 「なに悟ってんだか,いつものお前らしくないぞ」 「いや,黙っていても溢れてくる教養は隠そうにも隠せぬものって,ごはぁ」 「貴様がもて余しているのは,たぷたぷのお腹だけだろうがっ!!」 味レイマー2号のするどいつっこみが1号に炸裂しました. でもダメージは吸収されている様です. 「俺はもう真っ当な生活に戻りたいの」 心底思う2号. 一体どんな出来事が,彼をここまで思い詰めるに至らしめたのでしょうか? (でもなー,絶対無理だと思うんだけど・・・) 1号が真実をつきます,やれやれ. そんな思いをよそに,2号は仲間のレイマー達の所へ向かっていきました. 「君は一体誰かな?」 REDが2号に問いかけます. 「リーダー冗談きついよ,俺だよ,ALFAIN」 「彼ならここにいますよ?」 白Poroが指差す先には例のALFAIN人形が・・・ 「は?なにそれ?・・・ってお前誰だよ?」 2号が驚くのも無理はありません. 色が違うだけで,後は寸分の狂いもないPoroがそこに居たのですから. 「そうだよ,ALFAINはここにいるじゃないか」 TAISUKEとCzmも同意します. (う,嘘だろ!?普通どう考えたって一見して俺だって判るはずなのに) 同様しています. 理解不能な出来事に直面した人間は弱い物です. 「そっか,これ被ってるから判らないんだな」 味メットに気付いて脱ごうとする2号,ですが・・・ (・・・それ爆発するから・・・) 1号の嫌な言葉が浮かんできました. 「どうしたんですか?ALFAINだって言うなら顔を見せてください」 白Poroがニヤリとしながら話しかけてきます. メット越しで口元しか判りませんが,この表情,私嫌いです・・・ 「い,いや,ちょっと顔に傷ができて今は見せられないんだ・・・」 「そんな坊やな事言ってると左遷されますよ?」 逃げ場のない2号を容赦なく白Poroが問いつめます. 「・・あ,あるさ・・・」 後から見ていたAMIが割って入りましたが,白い手に口を塞がれます. 「AMIさん,貴女にはあちらで試合の準備をお願いしたはずですよ?」 「で,でも・・・」 「さぁ,我々は試合で忙しいのです,何処のどなたか知りませんが,これで失礼しますよ」 そう言い残し,足早に立ち去る面々. 「くっ・・・何も言えなかった・・・」 仕方なく1号の元へ戻る2号. 「やはり,お主は我と共に生きるしかないのだ」 「俺には何がなんだか判らないぞ」 混乱している2号に1号が語ります. 「乱れた食文化が皆を狂わせているのだ.やはり我々の手で正しい職ではなく,食を取り戻すのだ.それが我らの使命」 「そうか,きっとみんなカルシウムやビタミンが足りてないんだな.サーバーが良く落ちるのも,政治が良くないのも,レアがでないのも,給料少ないのも,電話代が高いのもきっと栄養バランスが悪いせいなんだよな」 「誰もそこまで言っておらんのだが・・・」 「よしっやるぞ,1号!!.俺はやるぞぉ.俺は今より正義の使徒,真実と味の使者,味レイマー2号だっ!!」 号泣しながら決意する2号.背中に2の文字が浮かんでいます・・・ (ノリがいいのか悪いのか良くわからんが,やるって言うのだから止めることもあるまいて・・・) どうやら1号は遊びのつもりだったようですが,ここにきて予定が変わった様です. そこのあなた.安易に物事を信じては行けませんよ・・・ 「みなさんお待ちかね・・・.それでは,バトルの方法をお知らせしましょう」 ANIKIがマイク片手に,ずばばーんと回っています. 「ステージセットアップッ!!バトルフィールド展開っ!!」 ごごごーと音がして,観客席(これが以外と大きい)が左右に離れていき,中央からいくつかステージがせり出してきました. そして,観客席の前には防護フィールドが展開されました. 「競技者には,自由にステージを選んで貰いますが,2組入ったステージはもう入れません.それがバトルの開始合図となります」 「相手を選べるか,それとも選ばれるか・・・」 ステージを見るFennelが冷静に呟きます. 「そして,両チームとも,料理を開始してもらいますが,このとき,相手を攻撃しても構いません!!」 わーっと大歓声が上がる. 「こらこら,一体何時から戦闘競技になったのよ・・・」 私は目眩を覚えました. 「うっしゃー,いっちば~ん!!」 IZUMIが真っ先にステージの1つに飛び込みます. 「あ,待ちなさいっ,決着つけたげる!!」 Millicent:Nが後を追います. 「私達も行きましょう」 「仕方ないなぁ」 SesilとMAIも続きます. その後,おおーっと歓声が上がります. IXYが華麗なステップで,つとステージに舞い降りました. フォマールのローブをよく見ると,普通ならないスリット入ってます. 動き安さを重視した,観客にも嬉しい?演出です. 「くっ,そういうこと?」 その後,私達に視線を向けています.あきらかに待っています. 「・・・仕方ない,やると言った以上,行くわよ,みんな?」 「つきあったげるよ,全く」 「でも勝てるの?いや,戦えるの?」 MachildaとYUKIも続きますが,確かに不安です. (だが,負けるわけには行かない・・・) 私もいつの間にか目的がすり替わっている様です. いやー,怖いですね,人間気がつくと本末転倒なことやってますから・・・ 浪速さておき,戦いの火蓋が切られたのです・・・ -終- |