■若さ故の過ち |
ここは洞窟.当然ながら食材を求めて徘徊するハンターズ達のいる所であるが,そんな中,2組のチームが1つの食材を狙ってやりとりをしていた. 「おっと,そいつは私達が先に見つけたんけどね~」 NAVEが目の前の3人組に向かって言う. 「ううん,私達の方が先だよ.この食材センサー”ハッタリ君Ver.2”がここ見つけたんだもんね」 IZUMIが負けじと言い返す. ハッタリ君Ver.2とは?つまるところ,針金をくの字に曲げただけのアレである. Ver.1は,曲げ方を失敗した為に破棄されている. 使い方は簡単.両手に持って,先端を前方に向けて歩き出す. 先端が目標をキャッチするとその方向に振られるので,そちらに向かって行くだけというとてもシンプルだが,太古より使用されてきたセンサー?である. 実際の所,目標を目視で見つけたのはNAVE達の方が先なのだが,策敵と言う意味ではIZUMI達の方が先だった. で,目標たる赤いナルリリーが1つ・・・ 「これはケーキの材料に絶対欠かせないんだよ」 MAIが主張する. 「そうです.私達にはそれが必要なんです」 Sesilも説得しようとしている. 「そんなこと言っても私達も欲しいんだけど.ねぇDain?」 NAVEがDainに問いかける. (うーん.今週の運勢では女難の相ありとでていたが,まさかこういう形とは・・・) Dainが唸っている.雑誌で見た占いを思い出していた様だ. 「こら,なんとか言いなさいよ」 「う,うわっと」 NAVEに小突かれてのけ反るDain.今ならガード不能である. 「やはり,話し合いによる,平和的解決を・・・」 おっとりと答えるDain. (・・・いくよっ2人ともっ!!) ((うん)) IZUMIが2人に目配せをする.何かを始める様だが・・・ 「お・に・いちゃ~ん.これ欲しいな~」 IZUMIがDainにうるうるとした瞳で話しかけ始めた. 「うっ!」 「兄様~.私からもお・ね・が・い・・・」 「はうあ!」 「あ,兄上・・・.わ,私からも,お願い致します・・・」 「ひょ~」 IZUMIやMAIとは違い,Sesilは幾分抵抗があるらしく照れている. だが,Dainにはかなり効果的な様だ. (・・・こ,これは良い・・・良いぞお・・・・) 萌えている.やばい,妹いない男には効果てきめんの必殺攻撃だ. 年齢制限ある分難易度は高いが,総じて童顔のこのメンバーならかなりいけるであろう. 「こらこら,何でれっとしてんのよ,情けない」 NAVEがこれだから免疫ない奴はと嘆いた. 「い,いやぁ,やはり俺達の方が年長さんなんだから,ここは譲ってあげても・・・」 (よっしゃぁ!!) ほくそ笑むIZUMI. 「あほかいっ,そんなことしてたら,あんたこの先何度でも良いように女にこき使われるわよ」 「そ,そんなつもりなんかじゃないもん・・・.兄様?私のこと嫌い?」 MAIが迫真の演技でDainに迫る. 「そ,そうだよ.俺の妹達になんてこと言うんだよ」 て,おひおひ,いつの間にかしっかり兄妹してるし・・・ 「ったく,相手にしてられないわ」 そう言いつつ,しっかりナルリリーに向かうNAVE.流石おねいさんだ. (はっ,どさくさに紛れてなんて事を・・・仕方ない,最終手段!!) IZUMIがハッタリ君Ver.2を掴んで振りかぶった. 「行けっ,ハッタリ君.ゴーシュートッ!!」 何をするかと思えばNAVEの足下に向かって投げつけた. 「どわっ!!」 狙い過たず足下に着弾,地面にキスするNAVE. 「・・・こ,こんちびっ子がぁ~,下手に出ていれば図に乗って~!!!」 流石に怒ったNAVEはIZUMIをげしっと叩いた. 「・・・うわ~ん,鍋にぶたれた~.痛いよぉ,おにいちゃーん」 「お,おい,いくらなんでもやりすぎだろ?」 Dainはそういうが,NAVEはちっと舌打ちした. (くそっ,裏目にでたか.あんにゃろ,さかしいことしてくれるわね・・・) 「鍋だからきっと中身空っぽなんだよ・・・だから乱暴なんだね,おにいちゃん」 IZUMIがしれっと言う. 「ナベナベ言うなぁ!!」 NAVEが怒る. そう,NAVEと書いて,ネイブとちゃんと読めた人は何人いるでしょうか? さあ,正直に答えなさい.あなたも最初,なべと思ったはずです・・・ 「もう,許さないわよ.1人の人間としてただおかないわよ」 すっかり切れちゃったNAVE. 「・・・ま,まあまあ,2人とも落ち着いてください・・・」 Sesilが流石にこれはまずいと思い,間に入る. 「楽しいから見てれば良いのに・・・」 MAIがどこから取り出したのか?団子を食べながら見ている. (まずいっ,俺の為にみんなが争うのは見ていられないっ!!) すでに思考が破綻しているDainも間に入ろうとした. が・・・ここで惨劇が起きた. 「あっ!!!」 Dainは,つまずいて前にこけた際に,両手を前に伸ばした. つるっ,むにゅっ. 2種類の効果音と共に,Dainは片手だけ何かに捕まることができたのを感じた. 「ふー,危ない,危ない・・・って柔らかいこの感触は・・・?」 よく見ると,Dainの目の前にはNAVEとSesilが立っており,Sesilは顔を真っ赤にして両手を胸の前で交差させている. NAVEはひくひくと額を痙攣させつつ,Dainの方を睨んでいた. 「はっ,こ,これわ!!」 Dainは右手が掴んでいる物の正体をようやく察した. NAVEの胸である.それなりのサイズはしっくりとDainの手にフィットしていた・・・ 「いつまでそうやってるのかな・・・」 NAVEの怒りは改めて爆発寸前だ. 「え,えっと・・・てことは,片方の,つるって言うのは・・・」 Dainは恐る恐る,Sesilを見る. 「・・あ・・・う・・・・」 Sesilのこの表情が全てを物語っている. 「あ,左手はSesilに捕まろうとしたんだね,いやぁごめんね.背中かな?」 言わなきゃいいのに余計なことを言うDain. 「せ・・・背中・・・」 当然ながらこっちを向いているSesilの背中を掴めるはずもなく・・・全ては言うまい・・・ 「・・・ど,どうせ私は人より小さいです・・・」 「げ・・・」 「あっちゃー・・・」 IZUMIとMAIが顔に手をやり手遅れだと言う仕草をする. 「・・・あれ?ど,どうしたのかなぁ?」 Dainもだんだん正気に戻ってきた様だ. 「・・・MAI・・・刀・・・」 「はい」 MAIは普段携行している刀をSesilに渡した.素直に渡さないと後が怖いからである. 「武装ーっ!!」 Sesilが叫ぶと,表情が一変し,凄まじい威圧感が辺りを支配した. 「な,なに?」 NAVEも一瞬あっけにとられた位である. 「・・・くっくっく・・・我を起こすとはな・・・相手は貴様か?」 半眼になっているSesilは最早別人であった. 「え,一体これは?」 Dainが状況を把握しようとする. 「・・・剣聖モードに入ったSesilは怖いよ.切れてるから何するか・・・」 IZUMIが珍しく冷静に答える. 剣聖モードに入ったSesilは,フォマールの域を超えたハンタークラスの戦闘力を有する. 「私も防御モードに入ろうっと」 MAIはさっき食べていた団子の串を構えて受け流しの体制に入った. ある意味,こちらも凄いですね. 「・・・許してもらえは・・・しないかな?」 Dainも最後の抵抗を試みる. 「誰が?」 とNAVE. 「・・・くくくっ,久々に腕が振るえる機会を見逃すかよ・・・」 Sesilは逝っちゃってます. 「ぎゃわーーーーー!!!」 その後数分間,Dainの絶叫が辺りを支配した. そしてその後・・・ 「はっ,私はまたやっちゃったんですか?」 「「はいはい」」 Sesilが正気に戻り,IZUMIとMAIに聞いたが,いつもの答えしか返ってこなかった. 「ふぅ,全く手間取ったわね・・・て.あれ?」 NAVEがナルリリーを探すが見あたらない. 「あ・・・,まさか」 IZUMIが指さす方向にはDainが横たわっていた. 「「「「ま,まさかっ!!!」」」」 全員はっとして,Dainを仰向けにした. 「これって・・・」 よく見ると,リリーはぺったんこになってDainの鎧に張り付いていた. 「あ~あ,もう食べられないよ・・・」 MAIが残念そうに言う. 「う,うーん」 Dainが目を覚ました様である. 「あんた,大丈夫?」 NAVEが一応気遣う. と,そのとき・・・ 「ゲッゲッゲ・・・」 なんと,ナルリリーが笑い始めた. 「な,なんで生きてるの?」 IZUMIが驚くのも無理はない. 「ひょっとして寄生防具だからかも?」 Sesilが言うとおり,Dainは寄生防具を装備していた,とはいえ,そのせいなのか,はたまたナルリリーの根性が勝ったのかは定かではない. 「ま,珍しいからいいか」 みんな納得することにした,自分ではないからというのも理由である. 「え・・・」 Dainは,しばし唖然とする. 「まいいかぁ.頼むぜ相棒!!」 適応力の高い奴である. 今後どんな騒動を巻き起こすか見物である. 結局,目的の物が手に入らなかった一行は,その後分かれて探索を続けることになったのである. -終- |