■マジカルハンター |
「もっと腰を入れるっ!!」 「は,はいっ!」 私は今,森の開けた所でIXY相手に,Wセイバーでの戦い方を教えていた. 少し前,急に使い方教えてと言われた時は驚いたが,まあ,セイバーは軽いのでフォースでも扱える剣だし,WセイバーはTP吸収効果もあって相性は悪くない. そう思った事もあり,承諾することにした. 「では,休憩ね」 私がそう言うと,IXYは休む為にこちらに近づいてきた. 「でもどうしてまた?」 テクニックに長けたIXYが前にでて戦う事を見たことはない. また性格的にも向いてないのではと思った. 「いえ,Thitoseさんの様になりたかったのですよ・・・」 そう言って遠くを見るIXY. 憧れて,でも決して届かない物を見る目だ・・・ それは誰にでも多かれ少なかれあるはずである. 他人を羨ましく思う事は,何も子供の時ばかりではない. 「そ,そんな.私なんて,IXYさんみたく綺麗じゃないし,それに筋肉ばっかだし・・・」 そう言って悲しくなった. 鍛え上げたと言えば聞こえは良いが,やはり女としての魅力には少々欠けるのではと急に感じ始めた. しとやかなIXYがいるので余計にそう感じてしまった. 「そうですか?私はしなやかで良いと思いますよ・・・」 性格でも敵わないやと思い,続けて練習に入った. 「Wセイバーに限らず,単体を相手とした武器は,必ずこちらの軸線上に敵が並ぶ様に戦うこと.つまり,常に自分の正面には敵は1体と言う事ね.これはとても大事だから,覚えておいて・・・.囲まれそうになったら攻撃を中断して即座に回避,相手の側面に回る事.後,壁際での攻防は特に注意.必ず逃げ道を確保して置いて.」 「そうですね・・・」 私は今まで実践してきた個々の戦い方を教えていった. だが,それはここまでだった. 「ち,Thitoseさん.危ないっ!!」 「くっ,何故ここに敵がっ!?」 油断していた.軽装で来たのも問題だった. 自分の武器はIXYに貸している.こういう場合どうするか? 片方だけでも逃がして応援を呼ぶことだ. 「IXYさん逃げてっ」 「あっ!!」 だが,そうそう上手く行かないのが実戦と言う物で. 2人仲良くラボの世話になることになった・・・ (・・・ん,まずいね・・・私の立場・・・) (・・・これ・・・・どうするんだ?・・・) 「・・う,うにゅ・・・」 周りの話し声もあって私は目を覚ました. 「あ,目を覚ました様だね」 見覚えのあるドクターがいた. (確かモン何とかって言う博士の親戚だとか何とか・・・) まさかと思い身体を抱きしめる・・・ふにゅふにゅ・・・ちゃんとある・・・ある・・・え? 自分の手を見てみた.異様に小さなおててである. ベッドの膨らみも何故か小さい.布団をめくると短い足が見えた. まるで子供の様である. みんなを見てみる.顔が引きつっている様だ・・・ 「・・・・うっきゃ~,なななな,なんでぇ~~!!!」 私の叫びがこだました. 「Thitoseさん.お気を確かに」 「いくしさん?」 ふと横を見ると,またもや驚愕とした. ハニュエールが立っていて,そこからIXYの声がしたのだから. 「な,何故と書いてなぜと読む・・・」 混乱度が上がる私. 「すまない,2人とも.蘇生の時に手違いがあってね・・・.意識の再生時に入れ違ったみたい」 「だから2人同時にやっては駄目だって言ったのに・・・」 後ろの看護婦から聞いてはいけない衝撃の事実・・・ 「こ,こここらぁ,どーしてくれんのよー」 あ,あれ?言葉使いまで幼いし・・・ 「ちーちゃん.これも運命と思ってあきらめませんか?」 IXYがさらりと言ってのける.そういやIXYは何故落ち着いてるの? 私フォマール・・・でも何故子供? 「それは大宇宙の意思だよ・・・ぐはぁ」 私はドクターを蹴飛ばした.どうやら機械をメンテしてからやり直すらしいので,しばらくはここままでいるしかない様だ. 「姉御は無事ですか?」 相変わらず情報の早い面々が来た. 「おっす,俺IXY.みんな宜しく~」 IXYが私の身体でそんなこと言うからみんな唖然としている. 「きゃー,一度やってみたかったんですよ~.しかも身体軽いです~.これでWセイバーもへっちゃらです!!」 ぴょんぴょん飛び跳ねるIXY.じっと手を見る私. ふと戦慄を覚えた.夢の叶った人間って,絶対手放したくないものだよね・・・.うわーい,私フォマールに転職ですか? 「そうそう,ちーちゃん.これ持ってこの台詞言ってみてくれる?」 すでにちーちゃん呼ばわりだ・・・あ,危ない,これは危ない.しっかり子供扱いになっている・・・ 「でもIXYさんの娘みたい・・・ひっ」 REDがそういうや否や,以前とはうってかわった素早さでセイバーの切っ先がREDの喉元へ・・・ 「・・・い・も・う・と.ですよ~.間違えないでくださいね・・・」 ((い,言わなくて良かった)) CzmとALFAINが冷や汗をかきながら同意した. 「で,なにこえ?」 「ちーちゃんをもっと可愛く見せる呪文ですよ.お願いだから言って~」 うーむ.セイバーがちらついているのは気のせいだろうか・・・ でも,言うくらいなら構わないので読み上げることにした. 「ふれっつ・けーぶる・でぃーえすえる.あなろぐ・でじたる・もでむでろすと.マジカルハンターいぶきちん華麗に登場!!・・・」 ・・・な,なんですか~このこっぱずかしい台詞はぁ~.しかもよく見たら振ってるのマジカルピースだし・・・ 「「「だはははは~」」」 笑うレイマー3人.全員いないのは幸いだろうか. 「きゃー可愛すぎる~,流石私の身体♪」 それは中身はどうでもいいと言うことでしょうか・・・ 「昔,そういうアニメ番組があって,その演劇でそれやったのだけど,自分では見えないから・・・」 「そえで,IBUKIって誰?」 どうやら主役の女の子の様だ. 何でも,魔法のロッドで変身して,魔法も使えるそうです. つか,時代を感じさせる呪文でした・・・ 「いや,このままでも良いかもね」 「ああ,可愛いしね」 好き勝手に言う面々. 「・・・うわ~ん!!」 私はベッドから飛び降りて病室から走り去った. だが,慣れないフォマールの服は走りにくかった. (何故子供用のを着せてあるのかは謎) 案の定階段でこけた・・・ 「・・う,うわーーー・・・」 「だわっ!!」 目が覚めた私は,荒い息をなだめつつ周囲,というか自分の手を見た. 「・・・ゆ,夢?」 鏡を見たが,自分の身体だった. さっきのは一体? 「と,とりあえず,汗流してみんなに話聞こうっと・・・」 シャワーを浴びに行く私.ベッドの側にハート型の杖が立てかけてあることに気付くのは後の事である・・・ -終- |