■終わりの始まり |
「ちょちょちょーっと~.考え直すなら今のうちだよ?」 「・・・今まで世話になったね」 「出会いがあれば別れがあると言う物ですよ」 IZUMIが慌ててMAIとSesilの2人を引き留めようとするが,2人の決意は固い様である. さて,こうなった経緯を振り返るとしよう・・・ 「うっしゃぁ~!!!かっっちなのらりよ~」 「むっきぃぃ~~~!!!」 今,1つの勝負に幕が下りた. 方法はどうあれ,人類創世以来,他人と競い勝ちを目指す行為は,幾多の時間が過ぎた今となっても本質的に変わってはいない. 良い見方をすれば,自己を高め,文明を発展させてきた力の根元と言える. 反面,何時の世も確実に他人との争いがある様に,人は戦いを根元的に必要としていると言う者もいた. とは言え・・・当事者達にとってそのような理屈などどうでも良いのである. 第三者が関わった所で余計なお世話と返事が返るであろう. 終わって後悔した時に始めて,何やってたんだろうと思うのが常である. 「やはり,私の勝ちだったわね・・・わははは~のは」 IZUMIが漏れる笑いをこらえようとせずに言い放つ. 「くっ,持続時間の短いGモードで長丁場するんじゃなかった」 Millcent:Nは,がっくしと膝をついてうなだれていた. (・・・これは!?) しかし,何やら発見した様である. (これなら私はあと3年は戦えるじゃなくて,勝負に負けて試合に勝てるかも・・・見てなさい,馬鹿IZUMIめ・・・) そうとはしらずIZUMI側・・・ 「しかし,これなんて名前の料理?」 MAIが巨大な入れ物に入ったみじん切り細切れ具材を見て言う. 「やはり夏だからそうめんと言うことで・・・」 「夏って何よ夏って・・・」 Sesilの提案にIZUMIが突っ込む. いや,こちらが夏だからそれで行きましょう. え?私はどちら側だって?あくまでキャラの口調で話してはいるけど,異なる者物. 時として自分の事象外の事も言わなくてはならない定めなの・・・ おっと,口調が変わっては統一性がない. 今の私はこの口調なのだから・・・ 「じゃあ,ぷりちぃ流しそうめん洞窟風って感じで命名~」 「すっごく脈絡ないというか,単純ていうか,私は気にしないけど・・・」 「お父さん.私は最善を尽くしましたが,ごめんなさい~」 MAIとSesilはすっごく乗り気でない. 「大丈夫だって,だいたい私達しか料理つくってないんだから,名前なんてなんでも勝ちは勝ちだよ」 ホントか?本当にそうなのか?確証ないのに公言を吐いて痛い目を見るのは良くあることで・・・ 「それじゃ準備っと・・・」 3人は流しそうめんにするべく,審査員の所まで移動することにした. 「では,最初の料理の登場です」 ANIKIが準備のできた料理を確認して,司会に入った. 「うわ~楽しみだね~.やっと食べられるよ」 「だ,大丈夫だよね?生放送だし・・・そんな危険なことって・・・」 ちらりと総督の方を見てみるHARMONY. 視線に気づき,ぐっと親指を立ててニヤリと笑う総督・・・ (だ,駄目だぁ・・・何か本能的に駄目だと告げている・・・) やったぜ総督,意味もなく愛想振りまくのはやめたまへ. また,各員の前には樋(とい)が通っている.ここにそうめんもどきが流れてくると言う寸法である. ウイーンと,机の下からつゆの入ったガラスのお椀がでてきた.当然割り箸もである. 「では,審査を開始してください」 「「は~っはっはっはっは~!!!」」 ANIKIが宣言した途端に高らかな笑いが木霊した. 「何者だっ!?」 「この世に料理は数あれど,人を憎んで味を憎まず.残さず食べよう母の味っ!!」 何処からか声が響く.だが,人を憎んではまずいような気もする. 「腹が減っては戦はできぬ.手持ちがないなら現地調達.泣くなら黙らす腹の虫!!」 ざわざわと観客もどよめいている. 「あ,あそこだっ!!」 誰かが発した声の方向に皆の視線が集中する. だが,暗くて良く判らなかった. 「ええい,ライト何をしておるか.こちらに向けい」 謎の人物は,どうやらライトアップを待っていた様である. ぴかぴかぴかちゅとライトが集まる. 「正義の食人,味レイマー1号,ここに見参!!」 「同じく2号ここに参上!!」 どぎゃ~んと謎の効果音と共に2人の変質者,もとい仮面の人物が現れた. 「え~,アトラクの方でしょうか?」 ANIKIが一応聞いてみる. 「いいや,我らは至高と究極の舌を持つ者として,この勝負審査させて貰うべくまかりこした・・・我らの参加を認められたし」 1号がそう言い放つ. 「うむ,承認」 総督が1秒で了承した. 生放送ということもあり,このまま行ってしまえとディレクターは既に辞表を書いているぞっ. 「しゅたっ!!」 「ひっ!!」 いつの間にか,HARMONYの隣りに座る2人. 額の味の字が,如何にも地方巡業の売れないレスラーっぽく見えたHARMONYであった. 「ではいくよ~」 IZUMIが段上からそうめんを流し始めた. 「えいえい」 「とおとお」 MAIとSesilも結構楽しんでいる. 「いっちば~ん」 KOTORAが一番最初に取って食べてみた. 「結構歯ごたえあるね~.でも割といけるかな」 そう言いつつこくんと飲み込んだ. HARMONYは恐る恐るちらりと見た. 少しKOTORAが震えた様に見えたのは気のせいだろうか? すると,びびーっと音がして,突如背後に先ほどスロットを持ってきた係の人が現れた. (何?) HARMONYはじっと見ている. 「はい,すいませんね」 そう言いつつ,KOTORAのスロットを1つ交換する人達. 「・・・どうやらこれは危険な様です・・・ええ・・・交換します・・・」 「え?味ですか?おいしいですよ」 背後の怪しい台詞をよそに,ANIKIの質問にKOTORAが答える. (うっわ~,今交換したのってスロットタイプのスケープドールって言わない?) HARMONYは戦慄した. まさに,君は生き残ることができるかって感じだ. ちなみに席順は,流れてくる方向から見て,KOTORA,HARMONY,1号,2号,総督,あとその他となっている. こういうと何であるが,2号以降まで流れる可能性が極めて低いという予想される. 「食べないの?」 KOTORAの声にはっと我に返るHARMONY. 「そ,そのうちね・・・」 一応形だけでもと,1束取ってみる・・・これをそうめんと言うなら,世の中の麺は全てそうめんの親戚である. 「うわ・・目,目,目ん,めんたま・・・ついてる・・」 つゆの中に瞳をみつけて驚愕のHARMONY. 「そんな麺を連呼しなくても,そうめんは麺だよ~」 KOTORAの台詞はHARMONYの真意ではなかった. 「では我が・・・」 1号が凄まじい量を一気にとって,ぱくんちょと食べた. 「美味・・・」 「これ喰っても平気なのか?」 2号は流石に即食べる勇気はなかった. 「では私が・・・」 総督が食べてみる・・・ 「うむ,なかなか涼しい感じがして良いな」 運は100オーバーかも・・・ 「では審査をどうぞって言っても双方から出たわけではないので,自動的にIZUMI選手側の・・・え?はい,少しお待ちください」 ANIKIが進行をしようとしたが,どうやら審議が入ったようである. 「おーっとぉ,ここで意外な落とし穴だぁ,勝者,Millicent:Nチームっ!!」 「「「にゃにぃ!?」」」 驚くのはIZUMI達である. 「ちょいちょい,どういう事なのよ~」 IZUMIが問いつめる. 「いや~,提出カードの名前のチーム名がそうなってたので,そうなったと・・・」 「だって,作ったの私たちなのに~」 「いーえ,ルールに乗っ取って言うと,私の料理と言えるわね」 突如高らかに言うMillicent:N. 「なんでよっ!!」 「あんたのことだから説明きちんと読まずに参加したのは明白・・・名前の書いてないパスは誰の物でもないと諺にもあるでしょう」 どんな諺だ~? そう,使用材料,その他諸条件を書いて,チーム名と一緒に提出するというデータ収集の側面があったのだ. ここで誤解がないよう言っておくが,これはバラエティー番組ではない・・・いや,今となってはそう言われても仕方ないのだが,元々は食料事情改善の為に,現地調達した素材が食べられるかという重大な目的があったからなのだ. みんな忘れているだろうけど・・・ そういう事もあり,記入漏れは入試の如く不合格.逆に条件さえ整っていれば書いてあることが真実なのである. 「と言うわけで,Millicent:N,ウイ~ン!!」 「IZUMI・・・あんた,未記入のカード落としたわね・・・」 「あれだけ私達が大丈夫かって聞いたのに・・・」 MAIとSesilが半眼になってIZUMIを見る・・・ 「・・・い,いやあ・・・」 IZUMIも流石にぴんちだ. 「私の目的は果たしたから,これで棄権するわよ.大体大会参加する気なかったんだから」 Millicent:Nは,そういうとただの観客に戻った. 「あ,お花~」 しゃがんでいきなり取り出した花を愛でるIZUMI. 「「なにをトチ狂っておるか~!!」」 IZUMIは2人に袋にされた. 「おーっと,これまた大波乱だ~.両チームがここで消えたぁ~.私としてはあちらの試合がとっても気になるので別に構いませんっ!!」 ANIKIは例の蒸し風呂ステージしかすでに興味がなかったりする. 生放送って良いよね,修正効かないし・・・ 兎に角,こういう理由で冒頭のシーンが導かれたわけである. 「できました~」 「よしっ,こっちも完了だっ」 Fennelとレイマーズも調理が終了したようだ. (うーん,どう見ても我が方が不利ですなぁ~) 白Poroが双方の出来映えを見て呟く・・・ こちらは明らかに美味そうでないし,試食した白Poro(しかも1人だけ)の舌は,これはマーベラスでデンジャ~な味だと判定していた. だが,美味そうに食べていたのも事実なのだが・・・ 「そこなおぜうさん・・・料理を審査員に提出する前に,双方の健闘を讃えてお互いに試食しあうというのはどうかな?」 「・・・そうですね,なんだか判らないうちにできてしまいましたが,仕上げは私がしたのだから,これは私の料理・・・ええ,構いませんよ」 あぁ,邪悪な策謀にはまるFennelの運命や如何に? 駄菓子菓子・・・事態は急展開を迎える・・・のか? -終- |