■決戦開始 |
「みなさんお待ちかねっ!!料理バトル決勝がやってきました.TVの前のみなさん.今晩のおかずには・・・ちょっと無理かも・・・しれませんが,番組終了までお楽しみください~」 司会者であるANIKIの宣言と共に,決勝の生放送が始まった. 本来,放送の予定などなかったのだが,ギルド管理委員会とパイオニア2上層部の密約の元,急遽放送されることになった. ラグオルは現在調査中であり,危険生物が予想を遙かに上回ってはびこっていることは,民間には内密にしてあるのだが,未だ解除されない上陸不可命令に対する不満の声も高い. 上層部は,不満を和らげる為に,矛先を反らす娯楽を提供する必要性があった. ギルド側としても資金調達の良い機会との認識の元,相互の利害が一致した. とかく,政府高官が何かしら行う事には,必ず経済的な背景があると言うことである. 「では,TV前の皆さんの為に,予選をダイジェストでご説明しましょう」 ANIKIがそう言うと,予選のVTRが流れ始めた. 会場の観客も歓声をあげて見入っている. その頃,舞台裏では・・・ 「Thitoseさん.貴女には悪いですが,我々が勝たせてもらいますよ」 「あ,ああ,そう・・・お互いがんばろ・・・」 白Poroが爽やかに言う. はっきり言って,どう応対したものか悩んでいる. 見た目は色違いなだけなのだが,性格は善人そのもの・・・と言うか,Poro寒冷地バージョン? シロクマみたいだけど,調教はできそうもない. どうにもぎこちなくなってしまう. 他の連中はどうなんだろう? 「あ,リーダー.それ私が持ちますよ」 「AMIさん,そんなことは私がやります」 「人の為に働くのって良い気持ちだなぁ~」 それに対してみんなは, 「「「「良しっ,任せたぞっ!!」」」」 って,おーい.しっかりなじんでるというか,こき使ってるよ・・・ あんた達,中身が違っても良いんだね・・・ 「あれ?ALFAINは?」 見慣れた顔の中に,いない人物を見つけて私は聞いてみた. 「あ,これです」 Czmが指差す先には,ALFAINと言う名札を付けた人形がちょこんと座っていた. 「これって・・・」 「代理ですよ,いざとなれば後から動かすから」 「そーいう問題?」 「いやぁお客にも受けますよ」 するとTAISUKEが割り込んできた. 「Thitoseさんのもありますよ」 なんと私の人形まで作ってあった. 「・・・これ何に使うのよ・・・」 「「人形劇に決まってるじゃないですか」」 2人はいきなり衝立の後に回って寸劇をやり始めた. 「「なぜなにPSO~~」」 私は思わず,ずるっという効果音と共にこけるところだった. 「・・・あ,あんた達ねぇ・・・」 2人はお構いなしに続ける. いつの間にか周りに人が集まってきていた. 「ねぇねぇお姉さん.どうしてラグオルに着いたのに上陸できないの?」 「それはね,まだ安全が確認されていないからよ」 「でも,これだけの時間かかっても安全確認できないハンターズって無能な・・・げふぅ」 「自主規制アターック!!」 人形の私が人形のALFAINに鋭いツッコミを入れている. 「な,なんていう話題・・・」 唖然とする皆をよそに話は続く. 「では,次の質問.どうしてハンターズの給料って少ないの?」 「それはね,ギルドの管理費がどうしてもかさむからなのよ.人数多いしね」 「とか言っちゃって,実は,ギルドが上前をたくさんはねるから・・・ごほぉ」 「自主規制アタックパート2!!」 衝撃でALFAIN(人形)の右手が取れそうである. 「良いパンチだ・・・おねえさん・・・」 ALFAIN(くどいようだが人形)は,よろよろと立ち上がる. 「やめなさいっ!!すごく間違ってるよ.その劇・・・」 私が言うと, 「そうですか?」 「では内容変えましょう」 どうやら判ってくれた様だ. 「「たそがれウエポンズ連続殺人事件!!!謎の温泉宿で美人ハンターは見たっ!!」」 どがしゃぁと,周りにいた全員がこけた・・・ 「な,なんなのよっ!!その,視聴率取るためだけにつけられた3流ドラマみたいなタイトルはっ!!」 私は,かろうじて立ち上がることができた. 「「駄目?」」 「駄目!!!」 「じゃあお約束シーンだけ」 お約束シーンと聞いて何か不吉な物を感じたが,とりあえず,見てみることにした. 「くっくっく,助けを呼んでも誰も来ないぞ・・・」 「私をどうするつもりっ!!」 手の取れかけたALFAIN人形が,人形の私を縛って言う. 「どうするだって?こうするのさぁ~」 「いやっやめてっ.助けて~~~」 裏声で私の人形を振り回して叫ぶTAISUKE. 演技には見えない迫力でALFAIN人形を操るCzm. 「や,やめんか~!!!」 私は,連続で,2人を殴った. 頭の上で2HITとか表示されそうだ. それにしても,最近こんな役ばっかり・・・恨むよ.神様いたらね. 「「じ,自主規制アタックパート3だね・・・」」 この様な状況下でぼける2人. 良い根性である. 「・・・いつまでもそうしてるとパート4喰らうよ?・・・」 「「たいさ~ん!!」 2人は一瞬にして逃走を開始した. 出番近いのにどうするんだか・・・ 「あ,もうすぐ出場者の紹介かな?」 外のざわめきでなんとなく判った. 出番はもうすぐだ. さぁ,行かなくちゃ.優勝は頂きだっ!!! -終- |