| ■総督の苦悩 |
「・・・はぁっ,はぁっ・・・間に合うの!?・・・はぁっはあっ・・・」
1人のハンターが息を切らせながら走っていた.
その者の名をEVE(イブ:ハニュエール)と言う.
「・・・確か事前のデータによれば,この先のT字路を右に行って突き当たりを左・・・」
EVEはとある艦内を目立たないように移動していた.
一体何をしているのだろうか?
人が来る度に身を隠す所からして,あまり穏やかな状況でもない様である.
「!?・・・ごふっ!!」
突如吐血するEVE.
(・・・早くしないと時間が・・・)
瀕死に見える彼女を駆り立てる物とは一体・・・
予断を許さない状況であるが,ここで場面は一転する.
「・・・ねぇ,これってホントに材料になるの?」
Machildaが私に向かって言う.
「さ,さぁ?私も判らないけど,きっと大丈夫だよ,絶対なんとかなるよ・・・」
とは言った物の,自信はなかった.
「さー次狩るよー」
YUKIが元気にIXYの所に行く.
私の周りには,食材(一応)の遺跡モンスターズの死体がたくさん・・・
何かどろどろした液体を流しているのもいます.食べても死なないのでしょうか?
「次は,ちょっとしたアテに使えるクローを大量に捕まえましょう・・・」
IXYの次の標的は決まった様だ.
私のチームはこの4人であり,場所は遺跡に決まった.
何か嫌な気持ちはしていたのだが,やはり倒したこれらを見ると余計に不安になってきた.
ただ,IXYは如何なる食材をも食べられる料理にしてしまう特技を持っていたので,審査員は大丈夫かなと思いこむ事にした.
「ちーってば,あんたも食べるの?これ」
「へ?あ,まあ味見はしないと出せないよね・・・」
しまった,そういやそうだ.如何な料理も味見なしでだすのはちょっと無謀です.
味見自体が無謀かもと思ったので,思わず祈る私.
「ちーちゃん,早く行こっ.じゃないと呪われるよ」
一体何に呪われるのだろうか?深く考えるとややこしいので,YUKIの後を追う事にした.
「ほほぅ.なかなか健闘しているチームが多い様ですねぇ」
ANIKIが,端末に逐次送られてくるチームデータを見て呟いた.
「わははは.それでこそ一大イベントだ.俺も司会をする甲斐があると言う物っ!!」
メイン会場にてポツンといるANIKIの台詞を聞く者は誰もいなかった・・・
「ひっとりでもさーみしーくないさー,るるる〜.俺は遊び人〜・・・」
やはり構って欲しい様です.
誰か我と思う人は行ってあげて下さい.
戻って来たチームはまだなく,決勝もまだなので会場には誰もいないという状況下で,ANIKIは早く来すぎたのだ.
なら他に行けば良いという話もありますね・・・
(・・・どうやってこの状況を伝えるか・・・)
男の意識は朦朧としていたが,思考を止めてはいなかった.
(この身体も俺の物ではない・・・だが,伝えられるのは俺しかいない・・・)
(あいつが目覚めた時に伝える事ができるのだろうか・・・)
男は今にも深い眠りに落ちてしまいそうだった.
もう1つの意識が覚醒するのを感じる.
それはこの身体本来の持ち主の意識である.
(身体を動かすまでには,まだなじんでいないのが悔やまれる・・・)
男は必至に身体を動かそうとしたが,それは徒労に終わる.
(・・くっ,次は何時俺が出られる?・・・駄目か?)
男の意識が戻るのは今回だけではなかったが,さりとて,確証があるわけでもなく,これが最後かという思いはいつもあった.
しかし,結局は眠りに落ちていくのであった・・・
「うむ,ご苦労だった,例の物は入手できたのだな?」
「当たり前でしょ.私を誰だと思っているの?」
総督の個室にて,総督を前に立って話すEVE.
先程の状況から一体どうなったのだろうか?
「で?これが一体どういう重要任務なのかしら?」
EVEが取って来たのは,食料製造艦からくすねてきたケーキだった.
「秘書やオペレーター達が我慢できんと言って来たのだ.立場上公にできんので,君に頼んだと言う訳だ」
けろっと総督は言う.
こらこら,部下位きちんと把握しなさい.
「私がいくら特殊任務用諜報員だからって,任務の途中にこんな事に使うなんて・・・」
EVEは憤慨する.
別の重要任務でラグオルに降りていたのだが,急遽任務が変更されたのだ.
「君の優秀さは知っている.だからこそ頼んだのだよ」
「当然特別ボーナスでるのでしょうね?」
「一応これだけだそう・・・」
総督はぴぽぱっと電卓を叩いて見せる.
「・・・ちょっと少ないんじゃ?」
ポケットマネーからの捻出なので総督も渋っている様です.
「だが,私も苦しいのだよ」
「・・ねぇん.そんなこと言わないでぇ・・・おじさま〜ん・・・」
EVEの特技の1つ,色仕掛けが発動した.
女性諜報員の必須技能とも云えよう.
「むぅ,こ,こら,人の胸の上でのの字を書くなっ!!」
つつっと側に寄って来たEVEに狼狽える総督.
ふぅと息を吹きかけるEVE.ホントにさっき瀕死の人間だったのか?
実は,EVEは極度の虚弱体質というか,任務遂行時に吐血することが多かった.
別に死なないのだが,相手を欺く時にも使用される.
演技でやっている内に自然にできる様に(嫌な特技だが)なったのである.
自らの演技に酔うタイプなので,瀕死の状況での任務遂行にロマンを見いだしていた.
こまったちゃんです.
(わ,私にはリコや母さんが・・・だ,駄目だっ,誘惑に負けてはいかん!!)
必至に家族の顔を思い出す総督,リコは今何処でしょうか?
仕事の都合上,妻にもあまり会っていない.
絶体絶命のピンチとも言える.
「・・・ねぇ.これくらいは上乗せしてよん・・・」
ぴぴぴっと悩ましげに電卓の上をEVEの指が走る.
「くっ,負けん,そんな攻撃には負けんぞっ!!」
負けないとは色仕掛けか?金額アップか?両方な気もするが,果敢に値段を下げにかかる総督.
「やるわね・・・これならどうぉ・・・」
指が総督の背中をつつつーっと走る・・・当然電卓にも.
「むむむぅ,か,母さん.リ,リコ・・・父さんはお前達を一番愛しているぞぉーー!!.これが限界だ,これ以上は出せん!!」
電卓をぴぴぴと打ち直しビシっと最後通達を出す総督.
(この辺が引き時ね・・・)
「判ったわ.それで手を打ちましょう」
EVEも流石に引き際を心得ており,無用な軋轢を生まない程度に引き出すことに成功した.
「じゃあ,私は前の任務に戻るわよ?じゃこれで・・・」
「・・・ああ,続けて頼むぞ・・・はぁはぁ」
息を荒げて総督が言う.
EVEが部屋を出た後,総督はおもむろに端末を叩いて自宅を呼び出した.
「・・・あ,母さんか?いや,特に用はなかったのだが・・・私は負けなかったぞ・・・あ,いや何.何でもないんだよ・・・早く一家団欒の時間が持ちたいと思っただけだ・・・」
人として,越えては行けない一線(一戦?)を守った総督は妻との会話でしみじみと安堵していた.
(こ,これは・・・!!)
アルラッピーは同士から送られてきた電文を読んで戦慄した.
(至急防衛体制を取らねば・・・博士にも連絡する必要があるな・・・)
同士からの連絡によると,森に大規模な狩猟部隊が展開されるとの事,注意喚起されたしとの内容だった.
(きゅぴー!!戦の準備だ!!)
(きゅぴぴぃー!!(×たくさん))
ラッピー達はにわかに慌ただしくなっていった.
−終− |
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