■抽選その2 |
「そんな・・・,俺達との事は遊びだったのですかっ?」 男達の1人,赤いレイマーが問い詰める口調で私を見つめる・・・ 全ては過ぎた事だ.誰しも自分の望まぬ状況に陥った時,否定をしようとする. 「私の事は忘れなさい.一時の偶然が生んだ出会いだったのよ・・・.縁がまだあるのならば,運命を紡ぐ糸が新たな模様を織りなす事でしょう・・・」 私はその場を立ち去ろうとする. 「それはあまりにも勝手です.俺達は,俺達は・・・」 「そうだ.これが運命だなんてあまりにも・・・」 黒いレイマー2人が私を引き留めようとする. 「・・・行っちゃうの?」 一緒にいる少女が悲しい瞳で見つめる. 「ごめんなさい・・・もう行かなくちゃ・・・」 踵を返し,歩き始める私. (俺はどうすれば・・・) 青いレイマーが壁越しにこちらを見ている. 出会いと別れ,それはいつの世も同じ事だ. 望む,望まぬ関係なしに訪れる. だが,それを繰り返す事で,人の繋がりの大切さを知る. そう,数多ある感動の1シーンにしか過ぎない・・・過ぎない・・・はずだった・・・のだが. 「姉御の嘘つき・・・」 太めの黒レイマーの一言で全てが無に返る. 「・・・いい加減,しつこいっっ!!何回同じ事やればいいの!!」 私はさっきからこの連中に後ろ指を指されているので,いい加減疲れてきていた. 「だってー.せっかく一緒のチームで行こうって言ったのに・・・」 みんなぶーぶー言う. 「だから,謝ってるじゃないの.それにあれは不可抗力だって・・・」 事の経緯は次のようになる. 料理バトルのチーム登録で,私はレイマーズに誘われていた. 特に決まってもいなかったので了承したのだが,結果的に別チームとなってしまったのである. 「ち~ちゃん.早く~」 火に油を注ぐ状況が訪れた・・・ 私と同じチームになったYUKIが待ちきれずに誘いに来たようだ. 手を引いているYUKIに連れられて,私はその場を立ち去ろうとした. 「待って・・・きゃうっ」 「AMIちゃん!」 AMIが駆け寄って来て転んだ様だ. 「・・うぅ,痛いよ・・・足挫いた・・・」 すがる様な目で見つめるAMI. 「ったく,大の男がいっぱい揃っていて突っ立ってるだけなんて・・・.はい,背中におぶさって・・・」 私はAMIを休憩室へ連れて行く為におぶる事にした. だが,これはAMIの計略だったのだ. 密かに勝ち誇る笑みをYUKIに向けるAMI. (やるわね・・・あなどれないわ・・・) YUKIがAMIの手腕を認める. だが,実はYUKIが私をチームに引き入れる時に使った手口と酷似しているのである. おかげで私は登録時間に間に合わずにチームに入れなかったのである. (登録期限は申請順に個別に設けられる) 少女2人の思惑を知らない私は,2人を連れて移動しようとした. 突如,背後で一斉に倒れる音がする. 「「「「「痛い~」」」」」 「あんた達までするなっ!!!」 見ると,5人揃って地面に転がっていた. 「姉御~,痛ぇよ~,おぶって~」 これ見ると捨てていくみたいで恥ずかしくなってきた. 全く・・・つまらない事に労力をかける連中だ・・・面白くて好きだけど. 「死ぬまでやってなさい」 私は構わずその場を後にした. 所は変わって抽選会場. 「妾は森を希望する故に,期待しておるぞ」 HELLIONがyamada3に,抽選箱から森を選ぶ様指示をしていた. 「はっ.我が知覚センサーレベルを最大にしてもってすれば,中の球を選ぶ事なぞ造作もない事・・・」 「頑張って・・・」 NERVが応援する. 「はぁーーーー」 ロボのくせに気合いを入れるyamada3. やはり最近のアンドロイドは精巧にできている. 「とうっ」 球を取るyamada3.球には「いせき」とか書いてある. (ま,まずい.我がセンサーによれば森のはずなのだが・・・) 対人探知に全力を回すと,誰にも球を取った事はばれていない様である. がたいが大きいのと,振り向かなくても周囲を識別できるロボならではである. (ふんぬぅー) 右手に全力を回すyamada3.球はくしゃっと潰れてただのゴミと化した. 「よしっ」 何がよしだ,何が・・・ この所行で参加チームが減る事になるのは後になって判ることである・・・ 「まだかえ?」 HELLIONが声をかけてきた. 「はっ,しばしお待ちを・・・.ふおぉーーーー」 再び索敵モードに入るyamada3.一々気合いを入れるのはご愛敬だ. 「とうっ」 球には「どうくつ」と書いてある. (ふん) またもや右手に全力を回し,握りつぶすyamada3. 個々の動作に一々全力を回さないと行けないのも燃費が悪いかと・・・ 「お兄ちゃん・・・」 NERVは兄の所行を知っていたが,何も言わずに見守っていた. 「それでこそ我が兄だわ・・・」 似たもの兄妹の様である. 「おい,早くしろよ.後ろつかえてるんだぞ」 待っているチームから文句がでる.まあこれだけかかれば文句もでるが. 「そうじゃ,はよせぬか」 HELLIONも流石にじれてきたので,覗き込んできた. 「はっ,ただいま」 yamada3は,えいやっと次の球を取った. 「うむ,見せて見よ」 HELLIONに球を奪われるyamada3.彼の視覚センサーには「こうどう」と書いてある様に見えた・・・ 「ではあなた達は坑道ですね」 何時現れたのだろうか?ANIKIが球を取って端末にデータを入力し始めた. 「・・・これ」 「御意・・・」 頭を垂れるyamada3.覚悟はできている様だ. 「やめてくださいませっ,兄を罰するならこの私も・・・」 間に入るNERV.麗しい兄妹愛だ. 「よう言うた,その願い叶えてしんぜよう」 「へっ?」 実は,HELLIONには逆効果なのをNERVは判っていなかった. 毎回見ているといい加減見飽きるものだ. 「「親方様っご無体な~」」 「えーい,性格おーえす再いんすとーるぢゃ」 HELLIONに引きずられてずるずると会場を後にする一行. すごいパワーだ.伊達に年はとってない!?(一応20代だそうです) しかし,まだ数組しか抽選終わっていないこの大会.先は長そうである. -終- |