■抽選その1 |
「みなさんお待ちかね.第1回ラグオル料理バトルME,ここに開催致します」 自称,司会進行役ANIKIの宣言と共に,ギルドホールにて開会式が始まっていた. ギルド幹部側は,別件の対応で人員に余裕がなく,また,メンバーの中から進行役を選ぶほうが,何かと便利(責任の低減と,予測外の暴動の矛先を反らす,等々・・・)なので,司会役を募った所,ANIKIだけということで,自動的に決まったのである. 本人はやる気満々なので,誰も気にはしなかった. 得てして,こういう事はやりたい人にやらせるのが一番とも言う. 「では,抽選に残ったチームの代表者は前に来て使用地域を選択してください」 当然,全員が参加を表明したわけではないが,それでもかなりの人数が参加していた. よって,1次予選を勝ち抜いた連中がここに集まっていた. 「さて,妾が最初に・・・おろ!?」 HELLION(ヘリオン:フォマール)が,一番乗りは当然自分であると言わんばかりに,最初に抽選箱に手をかけた瞬間,誰かに押しのけられた. 「どいてよ,おばさん.そんなちんたらしてたら進まないでしょ」 NAVE(ネイブ:ハニュエール)が勢い良くHELLIONを突き飛ばしたので,HELLIONは顔面から突っ伏した. 「よっと・・・お.Dain~.私達洞窟だって~」 NAVEが箱から取り出した玉には「どうくつ」と書いてあった. 箱の中には,現在ラグオルで探索可能な地域が4つに分けられて,それぞれ玉として入れられていた. そこで引き当てた場所で食材を探すのである.運も実力の内とはこのことか・・・ 「NAVE.そこの人大丈夫?」 後から来たDain(ダイン:ヒューマー)がHELLIONを見て呟く.当然大丈夫なわけはないのだが. 「お,お,おのれっ.妾に対し,何たる所行.ゆるしゃいませぬ.これ,お前達,何をしておるか!!」 「「御前に・・・」」 すっと2つの影が現れる. yamada3(やまだ3:レイキャスト)NERV(ネルフ:レイキャッシール)である,この2人兄妹として製作されていた. と言っても別に兄貴は10万馬力ではない. 「やっておしまい!!」 HELLIONは,ここが何処か特殊スキル「忘却」にて彼方へ追いやった様だ. 「我が名はyamada3.御前の命にて,成敗開始~」 「お,お兄ちゃん.ここじゃ駄目・・・」 「そか,なら止める」 止めるNERV,止まるyamada3.兄は妹に弱いのは古今東西の常識である(一部除外) 「こら,妾の命に従わぬか!!」 「妹よ・・・」 「お兄ちゃん・・・」 2人見つめ合うモードに入ると,数ターンは外部からのちょっかいは不可能である. だが,静寂を破る一声ここにあり・・・ 「にひひ・・・やまださんさんだって・・・ぷぷぷ」 抽選するために来ていたIZUMIが笑った. 「発音違うよIZUMIちゃん.やぁ~まだぁ~って言うのが正しいってこの本に書いてあるよ」 とMAIが言う,持っている本は,明訓書房刊とか書いてある. 「ちがわい.ヤマダスリーと呼ばないかっ」 yamada3.平常モードに移行. 「あぁ,お兄ちゃんに対する禁句を・・・」 狼狽えるNERV. 「じゃあ3体に分離してください.スリーって名乗るからには,分離合体か,3種変形がお約束ですね~」 Sesil(セシル:フォマール)が火に油を注ぐ. 「どっちもできるかぁ~」 yamada3は怒り爆発し,両手を振りかざした瞬間, 「止めぬか.ここを何処だと思っておる」 HELLIONが緊急停止スイッチを押す.さっきの自分はすっかり棚上げだ. 「・・・い,妹よ.俺はもう駄目だ・・・お前だけでも幸せに・・なって・・・く・・れ・・・」 「嫌ぁ,お兄ちゃん,死なないで.私1人だけおいていかないで~」 初めて見るなら感動のシーンなのだが,停止させる度にこれを見せつけられるHELLIONにとっては,もはやBGMとしてすら認識されていなかった. 「「「うぅ,感動です~」」」 3人は見るのが初めてだったので,感動していた. (さて,今の内に・・・) (全く.NAVEも無茶ばっかりするし・・・) NAVEとDainはそそくさとこの場を立ち去った. 実は,突き詰めればきちんと段取りしていないANIKIに責任がなくもないが,それを追求する人間もいなかったのである.大丈夫か?パイオニア2.未来は真っ暗かも・・・ 「あたい達はこっちで登録だ,行くよFi-Na,Rinoa」 「ったく,お前につきあうとろくな事ないんだけど・・・」 ONPUの声に対し,Fi-Na(フィーナ:フォニュエール)が文句を言う. 「あぁ,これでIXYさんのお役に立てるのですね~」 恍惚とした表情で妄想モードに入るRinoa(リノア:フォマール) 密かにIXYに憧れている少女だ. 一度IXYに世話になってから,彼女の様なフォマールになると心に誓ったのである. 「さぁ,残りのチームもどんどん抽選箱に集まってください~」 ANIKIも全然この場を把握していない様だ. みんな・・・絶対最後まで生き残るよ・・・ -終- |