■クローンラボ |
(しまった!) そう思った時には,もう回避不能な事態になっているのが世の常である. 先程,薙いだと思ったカオスソーサラーは幻影を残し転移していた. その後方から,デルセイバーが数体こちらに跳躍して来るのが見えた. (やはり先頭の敵は踏み台にしないと負けるのね・・・) そんな思考もつかの間,私は,全身に耐え難い痛みを受けた. 「くっ!!」 朦朧とする意識の中,先程拾ったテレパイプに手が伸びた所で私は力尽きた・・・ 「・・・ちゃん.ち・・ちゃん・・・」 「・・さん.あ・・・・・」 目を開けると,見慣れた面々がいた・・・のだが, (あれ?何故みんな天井にいるの?ここって無重力エリア?) 意識はまだはっきりしていない様だ.だが,正面に人が寝ている. (誰だろう?見たところハニュエールの様だけど・・・) 「Thitoseさん,しっかりしてください!!」 「ちーちゃん,起きて,起きてよぉー」 IXYとYUKI(ユキ:ハニュエール)が寝ている人に向かって話しかけている. 「姉御は無事なんですか?」 ドアが開いて,レイマーの面々が現れた. (全く,みんな騒々しいわね.私ならここに・・・ここにって,あれ?) 良く見ると寝ている人物は私ではないか. あの端正な顔は間違いない.なら私は?ふと横の鏡を見る. (う,うそっ!!) なんと,私は光の玉だった. みんなには見えてないのだろうか? だが,私の声も届いていないと言うより発せられていない様だ. 「ちーちゃん,どうして.やっと私を一緒に連れていってくれるって言ったのに・・・」 「YUKIさん.そんな事を言うとThitoseさんが困りますよ」 泣きながら身体を揺すっているのはYUKI. 幼い頃,一緒に遊んだことがある,まあ妹の様なものだ. 最近になって再会し,一緒に仕事をしようと約束していたんだっけ・・・ 「先生,姉御は助かるんですかい?死んでも再生できるんすよね?」 そうだ,なんの為に施設があるんだ.みんなそんなに泣くことないのに・・・ だが,私の考えとは裏腹に,ちらっとこちらを見た様な気がしたが, 「残念だが,施設は使えません」 とドクターは言った. っておひおひ,まさか私って再生不可な状況?そもそも私って死んだの? 「うぅ,Thitoseさん・・・良い人だったのに・・・」 みんな涙を流してくれている.やはり気の良い連中だったのね. 「そうそう,こういう時ってお姫様は王子様の登場によって目覚めるのがお約束ですよね~」 ぽんと手を叩いてうなずくIXY. IXYのターン.セットエンチャントワールド,白馬の王子様. (効果:眠っている女性キャラクター1人に復活判定を行い成功した場合,そのキャラクターは判定者の場にアン○ップ状態で配置される) 刹那,場の雰囲気が変わる. 「「「「「うっしゃぁー」」」」」 あぁ,恐れていた事がぁ・・・.目つきが変わるレイマーズの面々. 「お前等,後は俺に任せろ」 とPoro. 「いやいや,人工呼吸ならお任せアレ」 とRED. 「お,俺はもう,感無量です・・・」 ふるふる震えながらALFAIN.おいっ何を想像してるっっ!! 「俺のテクでメロメロにしてやるぜ」 Czmがキラリと目を光らす. 「コーホー」 うわぁ,Kenta,なんか変な呼吸音し始めたし,目の色赤だよ,赤. ロボットの目が黄色から赤になると絶対悪に染まっているのは言うまでもない. (お,おい,起きろ,起きるのよっ,まいぼでぃ!!最大級の危機なのよ!!) 身体はというと,声に反応したのか?目の幅の涙を流し始めた. 「おぅ,姉御も感極まって泣いておられる.やりがいあるのぉ」 Poro,貴様は何処をどう見たら喜んでいる様に見えるんだぁ!! 「ふむ,そろそろ時間かな?」 ドクターがふと手をこちらに伸ばした. 「この辺だと思うんだけど・・・」 (あ,あれ?) 私はドクターの手に押されて身体に吸い込まれていった. 刹那,がばちょと上半身を起こす私. 「っぜーはー,ぜーはー」 「あ,姉御!!」 私がぎろっと睨むと面々は後ずさった. 「実験成功だよ,ありがとうThiotse君,後少しで完全に死ぬ所だったね.その時は再生させてあげるけどね」 なんてヤツだ,きゃつは私を生きた実験台にしたのだ. そもそも,さっきの私の状況って一体? 名医と言うのはこういう事の裏返しなのか? 「とりあえず,寝かせて・・・」 もう考える余裕もなかった.我が未来に幸多からん事を・・・ -終- |